自社のWebサイトを構築する際、多くの方が最初に直面する悩みの一つが「WordPressを使うべきか、それともSaaSサービスを使うべきか?」という選択です。「とりあえずWordPressで」と考える方も少なくありませんが、サイト構築は運用が始まってからの負担やコストが大きく変わるため、初期段階での選定ミスが後々の運用コスト増やトラブルに繋がることも多くあります。今回は、WordPressとSaaSサービスそれぞれの特徴とメリット・デメリットを整理しつつ、自社にとってどちらが最適なのかを考えるヒントをお伝えします。WordPressの特徴と向いているケースWordPressは世界的に利用されているオープンソースのCMS(コンテンツ管理システム)で、自由度の高さが最大の魅力です。■ メリット自由度が高い:デザイン、機能ともに柔軟にカスタマイズ可能ランニングコストを抑えやすい:無料テーマやプラグインも豊富で初期費用も比較的安価拡張性が高い:ブログだけでなくEC、会員サイトなど多用途に対応可能 ※ただし、会員サイト機能についてはWordPressそのものにユーザーアカウントを登録させる構造になるケースが多く、ログイン管理やユーザー権限管理が複雑化するため、実運用を考えるとあまり向いていない側面があります。専門的なプラグインを導入する必要があり、安易な実装はトラブルの原因となります。■ デメリットセキュリティ管理が必要:プラグインの脆弱性やアップデート対応が常に求められるメンテナンスが煩雑:PHPコードやテーマ構造の理解が必要サーバー管理が必要:自分で契約し、運用・監視する必要があるつまり、WordPressを選定する場合は、社内または外注先にWordPressのコード保守・サーバー・セキュリティ管理を担える人材がいることが前提条件になります。これは見えにくい「人件費」という形でのランニングコストがかかってくるため、単に「無料で使えるから」という理由だけで選定するのは危険です。SaaSサービスの特徴と向いているケースSaaS(Software as a Service)型のホームページ作成サービスは、Wix、STUDIO、ペライチなどが代表例です。サーバーもCMSも全てサービス側が用意しており、契約してすぐに使える手軽さが魅力です。■ メリットセキュリティ対策が不要:サービス側が最新の対策を実施サーバー管理が不要:アクセス増加時の負荷対応も含めて自動メンテナンスの難易度が低い:HTMLやPHPの知識不要、直感的な操作で運用可能■ デメリットカスタマイズの自由度が低い:制限されたテンプレートや機能に依存ランニングコストが割高に見える:月額料金が発生(例:月額3000〜1万円など)ただし、サービスに含まれる「保守・運用・セキュリティ対応・プログラム管理」まで考慮すれば、実は適正価格であることが多いのも事実です。さらに、必要な設定(SEOやデザインなど)だけをスポットで外注することも可能なので、自社で専門人材を抱える必要がない点も大きなメリットです。結論:選定前に“社内体制”を見つめることが重要WordPressを選ぶ場合は、その自由度の高さを活かせる体制が整っていることが必須です。PHPを扱える開発者、セキュリティに対応できるインフラ担当者、定期的なアップデートを行える人員など、ランニングコストの中に“人件費”という見えないコストが含まれることを見落としがちです。一方で、SaaS型サービスは、保守・運用・セキュリティ対応を外部に任せられる代わりに自由度が制限されます。しかし、基本的な機能が十分に揃っており、Webに専門性のない事業者にとっては非常に大きなメリットとなります。